尚美学園大学 講義授業シラバス 2008 (川島素晴)

【水曜日】 IV時限:現代音楽史・・・(対象:西洋音楽史II 既習者)


現代音楽史


<概要>
本講義で扱う「現代音楽」とは、西洋クラシック音楽の延長線上に発展した、20世紀におけるクラシック音楽のことである。
今聴いてもなお斬新・難解に響くこれらの音楽は、しかし、既に前世紀(=過去)のものであり、
今日我々が音楽活動を営む上でその歴史を知ることは必須なことである。
また、「現代音楽」は、様々な価値観、音楽思考に基づいており、それらを理解することは、
これまでに抱いていた音楽の概念そのものを拡充することにつながるであろう。

<春/秋学期 同一内容を開講>

(1) 新ウィーン楽派(シェーンベルク、ヴェーベルン、ベルク)
後期ロマン派、無調、12音技法へと進む系譜を概観し、極小様式を代表してヴェーベルン『バガテル』を見る。
12音技法の用法における3人の対比を見る。他に『5つの管弦楽曲』『月に憑かれたピエロ』等。
[備考] 音色旋律、室内歌曲、シュプレヒシュティンメ、極小様式、12音技法の様々な用法
 
(2) メシアン〜ブーレーズ
MTL等の戦前の語法を踏まえ、その後の対称置換等を見た後に『音価と強度のモード』を分析する。
また、『構造』第1巻から第2巻への系譜、及びその後のフランス音楽に影響を及ぼしたブーレーズの軌跡を見る。
[備考] 「我が音楽語法」、『音価と強度のモード』、トータルセリー、IRCAM

(3) シュトックハウゼン、ノーノ
『クロイツシュピール』、及び「Texte」第1巻の内容を踏まえて、シュトックハウゼンの軌跡を辿る。
また、ノーノにおけるセリエリズムとその後の系譜。並行して電子音楽の系譜を見る。
[[備考] 点、群、モメンテ、フォルメル、直感音楽、フィボナッチ数列、電子音楽
 
(4) クセナキス、ポーランド楽派
「音楽と建築」を踏まえ、後年UPICによる創作に至るクセナキスの創作を辿る。
また、トーンクラスターの諸作品、及びルトスワフスキなどその他のポーランド楽派の手法を見る。
[備考] 推計学、篩、その他様々な理論、クラスター、特殊奏法、アレア
 
(5) リゲティ(&ナンカロウ)
『アトモスフェール』等のカノン技法を踏まえ、『室内協奏曲』の音列操作法を見る。
また、1970年代以後のリゲティに影響を与えたナンカロウの作品と、その後のリゲティを見る。
[備考] ミクロ・ポリフォニー、自動ピアノ、ポリ・リズム
 
(6) 引用、即興、演劇性、新ロマン主義
ベリオ『シンフォニア』と引用音楽、 グロボカールにおける奏法の探求、及び即興音楽の展開。
カーゲル『国立劇場』の実演。リーム等の新ロマン主義、ペルト等の新しい単純性の動向。
[備考] シュマン、引用、世界音楽、ヴィルトゥオジティ、発話、身体性、即興の手法、演劇性、アイロニー
 
(7) アメリカ実験主義の黎明
アイヴス、カウエルの様々な発明。ヴァレーズ、パーチ、ハリソンらの戦前の実験音楽の系譜。
また、ロシアにおける微分音の探究、イタリアの未来派、シュヴィッターズの音響詩等、ヨーロッパ戦前の補遺。
[備考] 複数の音楽の同居、ピアノ内部奏法、打楽器合奏、純正律楽器、ガムランの導入
 
(8) ケージ
プリペアド・ピアノ、偶然性、不確定性、図形楽譜など、ケージの軌跡を概観。
また、『Variations II』のリアリゼーションを実践し、受講者全員で、その場で実演する。
[備考] 25音技法、平方根リズム、易経、紙のしみ。(紙と定規、計算機、簡易楽器を持参)
 
(9) アメリカ実験主義の様々な展開(ミニマル他)
図形楽譜に始まり長大な反復的音楽に至るフェルドマンの軌跡。フルクサスの実践。
ヤング、ライリー、グラス、そしてライヒらのミニマルの系譜、及びアダムスらその後の展開。
[備考] 図形楽譜、ダダ、ハプニング、エターナルシアター、反復音楽、ポストミニマル
 
(10) 70年代以後〜ドイツ(特殊奏法の探究と、新しい複雑性)
特殊奏法の探求は、1970年代以後にピークを迎える。また、新ロマン主義への再反動としての複雑性。
そしてその後のドイツ語圏の音楽の流れを見る。
[備考] ラッヘンマン、ホリガー、ファーニホウ
 
(11) 70年代以後〜フランス(スペクトル楽派)
先行してイタリアのシェルシ『4つの小品』を見て、フランスにおけるスペクトル楽派への展開を考察。
特にグリゼイの『音響空間』を中心に見て、その後のフランス音楽の展開を追う。
[備考] 一音の音楽、倍音、差音、音響分析、推移
 
(12) 70年代以後〜イタリア、他
ドナトーニの『Omar』を分析し、シャリーノ等、1970年代後半以後のイタリアにおける作曲界の流れを見る。
また、その他の1980年代以後の様々な動向を、主としてこれまでに扱っていない国を中心に見る。
[備考] オートマティシズム、アルゴリズム、北欧等ヨーロッパ周辺
 
(13) 日本とアジアの作曲家
尹伊桑、譚盾、ホセ・マセダ等のアジアを代表する作曲家。
及び、松平頼則・頼暁、松村、武満、佐藤、近藤、西村、細川等から、新しい世代に至るまでの日本の作曲界。
 
(14) 期末試験(選択問題、資料持込不可)

<使用テキスト> 
毎回の資料は必要に応じて配布するが、配布物はどうしても楽曲の一部になってしまう。
「現代音楽史」で扱う楽曲は、本学メディアセンターに所蔵していないものも多い。授業内での試聴機会を逃さないように。
なお、本授業内容について、ウェブ連載を行う予定。

<履修条件(履修前提科目)>
「西洋音楽史 I」及び「西洋音楽史 II」の既習者を前提とする。

<成績評価方法>
成績評価の90%は期末試験に基づく。試験内容が選択問題なので、授業にどれほど能動的に参加していたかが
客観的な数値として直接反映すると考えているためであり、出席を軽視しているのではない。
出席点も10%加味するが、単に出席するだけでなく、授業の場での見聞を経験値として蓄積して欲しい。

<その他、教員からの要望事項>
授業時間は限られているので、授業内に扱う楽曲全体を試聴できない場合が多いことが予想される。
また、この授業で扱う楽曲は、メディアセンターを含めてなかなか音源や楽譜を入手できないものも含まれている。
各自興味を持った楽曲については、要望に応じて音源などの貸出にも応えるつもりなので、申し出てほしい。


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<他のシラバスへのリンク> 楽曲分析 I & II  楽曲分析 III & IV  楽器法 I & II



<アーカイヴ>

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