尚美学園大学 講義授業シラバス 2007 (川島素晴)

【月曜日】 II時限:総合演習・・・(対象:作曲コース・クラシック専攻3年)


総合演習


<概要>
20世紀から今日に至るまでの西洋音楽史を、CD試聴、楽譜の検証、楽曲分析を通じて概観する。
春学期は、2年次に履修した内容を踏まえて、新ウィーン楽派に始まり、トータルセリー、クラスター、等々、1960年代までのヨーロッパ前衛の系譜を辿る。
秋学期前半は、20世紀初頭に始まるアメリカ実験主義の系譜を辿り、後半には、1970年代以後の展開を、世界的な視野で概観する。 

<春学期>

(1) シェーンベルク
後期ロマン派、無調、12音技法へと進む系譜を概観し、『5つの管弦楽曲』『月に憑かれたピエロ』を研究する。
[備考] 音色旋律、室内歌曲、シュプレヒシュティンメ
 
(2) ヴェーベルン、ベルク
極小様式を代表してヴェーベルン『バガテル』を分析。また、同門2人の12音技法の用法における極端な対比を見る。
[備考] 極小様式、12音技法の様々な用法

(3) メシアン
MTL等の戦前の語法を踏まえ、その後の対称置換等を見た後に『音価と強度のモード』を分析する。
[備考] 「我が音楽語法」、『音価と強度のモード』
 
(4) ブーレーズ
『構造』第1巻から第2巻への系譜、及びその後のフランス音楽に影響を及ぼしたブーレーズの軌跡を見る。
[備考] トータルセリー、IRCAM
 
(5) シュトックハウゼン
『クロイツシュピール』分析、及び「Texte」第1巻の内容を踏まえて、その後の軌跡を辿る。
[備考] 点、群、モメンテ、フォルメル、直感音楽等
 
(6) ノーノ、電子音楽
ノーノにおけるセリエリズムとその後の系譜。並行して電子音楽の系譜を見る。
[備考] フィボナッチ数列、ムジーク・コンクレート
 
(7) クセナキス
「音楽と建築」を踏まえ、後年UPICによる創作に至るクセナキスの創作を辿る。
[備考] 推計学、篩、その他様々な理論
 
(8) ペンデレツキとポーランド楽派
トーンクラスターの諸作品、及びルトスワフスキなどその他のポーランド楽派の手法を見る。
[備考] クラスター、特殊奏法、アレア
 
(9) リゲティ-1
『アトモスフェール』等のカノン技法を踏まえ、『室内協奏曲』の音列操作法を分析する。
[備考] ミクロ・ポリフォニー
 
(10) ナンカロウとリゲティ-2
1970年代以後のリゲティに多大な影響を与えたナンカロウの作品を研究し、その後のリゲティを見る。
[備考] 自動ピアノ、ポリ・リズム
 
(11) ベリオと引用音楽
ベリオの系譜を辿り、『シンフォニア』とそれ以後の作曲家における引用音楽の系譜を辿る。
[備考] シュマン、引用、世界音楽、ヴィルトゥオジティ
 
(12) グロボカールと即興音楽
グロボカールの創作における、ヴィルトゥオーゾ的奏法の探求、及び即興音楽の展開について。
[備考] 奏法の探求、発話、身体性、即興の手法
 
(13) カーゲルとムジーク・テアター
音楽における演劇的要素の導入を、『国立劇場』等の実演等を交えて検証する。
[備考] 演劇性、アイロニー、笑い
 
(14) 総括
ここまでの授業内容の中から、各自、研究成果を発表する。(レポートの提出により単位認定。)
 
(15) 予備
実習等で出席者僅少が想定される場合には、本講義の成果を踏まえた自作プレゼンテーション等を行う。
 
<秋学期>

(1) 20世紀初頭の様々な動向
ロシアにおける微分音の探求、イタリアの未来派、シュヴィッターズの音響詩等、周辺の概観
[備考] ヴィシネグラツキー、ルッソロ
 
(2) アイヴス、カウエル
アメリカ実験主義の黎明。2人の実践した様々な発明を見る。ピアノ内部奏法は実演も試みる。
[備考] 複数の音楽の同居、ピアノ内部奏法
 
(3) ヴァレーズ、パーチ、ハリソン
アメリカに移住したヴァレーズ他、ケージにつながる戦前までの様々な実験的音楽の系譜を辿る。
[備考] 打楽器合奏、純正律楽器、ガムランの導入等
 
(4) ケージ-1
プリペアド・ピアノ、偶然性、不確定性、図形楽譜など、ケージの軌跡を概観する。
[備考] 25音技法、平方根リズム、易経、紙のしみ
 
(5) ケージ-2
『Variations II』のリアリゼーションを実践し、受講者全員で、その場で実演する。
[備考] 紙と定規、計算機、簡易楽器を持参
 
(6) フェルドマン、フルクサス
図形楽譜に始まり長大な反復的音楽に至るフェルドマンの軌跡。一方、フルクサスの実践を実演を交えて辿る。
[備考] 図形楽譜、ダダ、ハプニング
 
(7) ライヒとミニマル音楽
ヤング、ライリー、グラス、そしてライヒらのミニマルの系譜、及びアダムスらその後の展開。
[備考] エターナルシアター、反復音楽、ポストミニマル
 
(8) ラッヘンマン、ホリガーとドイツ語圏の音楽
特殊奏法の探求は、1970年代以後にピークを迎える。そしてその後のドイツ語圏の音楽の流れ。
[備考] 伝統の異化、自らの楽器の構築
 
(9) シェルシとスペクトル楽派、その後のフランス音楽
シェルシの『4つの小品』、及びグリゼイの『音響空間』の分析、そしてその後のフランス音楽の展開を追う。
[備考] 一音の音楽、倍音、差音、音響分析、推移
 
(10) ドナトーニとイタリアの作曲家
ドナトーニの『Omar』を分析し、1970年代後半以後のイタリアにおける作曲界の流れを見る。
[備考] オートマティシズム、アルゴリズム
 
(11) 新ロマン主義とニュー・コンプレキシティー
リーム、ペルトら、単純性や表現性を重視した潮流と、ファーニホウらイギリスの作曲家に顕著な再反動としての複雑性。
[備考] 『Unity Capsule』研究
 
(12) その後の動向
1980年代以後の様々な動向を、主としてこれまでに扱っていない国を中心に見る。
[備考] 北欧等ヨーロッパ周辺、アジア
 
(13) 日本の作曲家
松平頼則・頼暁、松村、武満、佐藤、近藤、西村、細川等から、新しい世代に至るまで。
  
(14) 発表
本講義の内容を踏まえいずれかを実践。 1)通常の奏法を用いないピアノ作品の自作自演 2)楽曲分析レポート 
授業内での自作自演か、レポートの提出。

(15) 予備
実習等で出席者僅少が想定される場合には、本講義の成果を踏まえた自作プレゼンテーション等を行う。



<使用テキスト> 
参考図書をその都度授業内で指示。

<履修条件及び教員からの要望事項>
授業で取り上げる楽曲はもとより、そこから派生する様々な音楽を自ら積極的に研究する姿勢が不可欠である。
また、常日頃、新しい音楽の動向に目を向け、好奇心を絶やさない必要がある。
更に、授業やその他の機会に得たあらゆる音楽に対する知見を、自らの音楽観と照応させ、
徐々に自己の音楽観や様式を確立していく努力を継続して欲しい。
本講義の話は毎回縦横に結び付きあっており、1度休むと、また、授業開始に遅れると、話についていけない可能性が高い。
欠落をフォロウする時間的余裕はないので、皆勤が望まれる。




尚美学園大学 講義授業シラバス 2007 (川島素晴)

<他のシラバスへのリンク> 楽曲分析 I & II  III & IV  楽器法 I & II