エクスドット
eX.
eX.(エクスドット)は、作曲家・川島素晴山根明季子によって
2007年4月からスタートした現代音楽のシリーズである。
実験性、体験性を重視した通常のライブに加え、
experiment(実験)と称するレクチャーを併催し、多角的に掘り下げる。



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「甲斐説宗の音楽」―生誕70年・没後30年に寄せて

朝日新聞「<回顧2008>今年のクラシックを振り返る」に於いて、
当公演が年間 Best 3 に選出されました。
(評者:片山杜秀氏)
詳細はこちら


2007年4月から始められたeX.(エクスドット) のシリーズ、8回の東京公演を開催してきた中には、
シュトックハウゼン、ファーニホウ、ケージ、湯浅譲二といった現代作曲家の個展企画も含まれていました。
9回目となる今回は、1978年に40歳を迎えることなく夭逝した作曲家、甲斐説宗の個展を開催致します。
その早すぎる晩年に到達した、切り詰められた音素材が淡々と歩む作風は、
音への真摯な探求が導いた無二の音世界であり、最晩年の数曲が示す完成度は、
同じ頃にフェルドマンが到達する語法と比肩し得るもので、国際的にも重要な存在です。
しかし、それを解する限られた層の絶大な評価を得つつも、今日に至るまで、一般的には正当な評価を得ていないと言わざるを得ません。

実は甲斐個展企画については、ちょうど10年前の生誕60年の機会にも、
演奏会とシンポジウムなど、5日間に及んで盛大に開催しました。→1998年の詳細
それから10年を経て、今一度甲斐説宗を取上げたのは、まず彼の作品を知らない世代に聴いてもらいたいという気持ち、
そして21世紀にもなお甲斐の音楽が新しく響くことの証として、今回集った編成のための編作した版の「初演」も試みます。

演奏者として迎えるのは、まずは、若手で最も甲斐作品を上演している木ノ脇道元さんと、彼率いるフルート四重奏
「Nozzles」
作曲者の弟がフルーティスト甲斐道雄であるため、寡作な中にもフルート作品は多く、今回は事実上、「甲斐説宗フルート作品展」でもあります。
4名が分担演奏する中でも注目は「メゾソプラノとフルートのための音楽」を、声楽もこなす古田土さんの歌でお聴き頂くことでしょう。
なお木ノ脇さんによれば、Nozzles 結成のきっかけが甲斐説宗の「4人のフルート奏者と1人の打楽器奏者のための音楽」を
いつか上演したいからだったそうで、打楽器の神田佳子さんのサポートも得て、思いのこもった演奏が期待されます。

もう1グループは、ヴァイオリンの甲斐史子さんとピアノの大須賀かおりさんとのデュオ
「ROSCO」です。
10年前、亡父の個展で一夜を担当したのが、リサイタルデビューとなった甲斐史子さんですが、
その後10年を経て、今や現代音楽のスペシャリストとして欠くべからざる存在となっております。
様々な意味で万感ひとしおの舞台、ぜひお立会い下さい。



 甲斐説宗 (かい せっしゅう)

 1938年 11月15日 兵庫県三田町の禅寺に生まれる。
 1955年 大阪音楽大学附属高校入学、坂本良隆、近藤圭に師事。
 1960年 東京芸術大学作曲科に入学。長谷川良夫に師事
 1965年 同大学院入院。しかし奨学金を得て留学が決まり退院。
 1966年 ベルリン音楽大学(現ベルリン芸術大学)に入学。
        ボリス・ブラッハーに作曲、ヨーゼフ・ルーファーに12音技法を師事。
 1967年 ドイツ楽壇にデビュー。G. リゲティの助言を受ける。
 1969年 ヴィオッティ国際音楽コンクール入選。年末に帰国。
 1970年 東京学芸大学講師。ベルリン国際作曲コンクール入賞。
 1972年 日本現代音楽協会の音楽展への出品、NHK等からの委嘱等、
        日本での本格的な作品発表を開始。独自な音楽世界を確立する。
 1975年 東京学芸大学助教授、東京芸術大学作曲科講師に就任。
        この後、禁欲的な音世界へと移行、充実した創作を展開。
 1978年 元来寡作な甲斐が一気に4曲を完成。
        50日の闘病の末、10月31日、心不全、甲状腺癌肺転移により39歳で逝去。
 1979年 3回の追悼演奏会。その後、1980、84、95、97年にも個展開催。
 1998年 生誕60年、没後20年に際し、3回の演奏会とシンポジウム、レクチャーコンサートを開催




<live> 2008年9月29日(月)19:00開演 18:30開場
杉並公会堂・小ホール

¥3000 (予約・前売り¥2500)


<全曲 甲斐説宗の作品>
ヴァイオリンとピアノのための音楽 II
(1978)
メゾソプラノとフルートのための音楽
(1968-69)
フルートソロのための音楽
(1975-76)
フルートとピアノのための音楽
(1978)
4人のフルート奏者と1人の打楽器奏者のための音楽 (1972-73)

ヴァイオリンとチェロのための音楽 II (1976) に基づく 2人のフルート奏者のための音楽 (2008川島編 /初演)
3人のマリンバ奏者のための音楽 (1977) に基づく 3人のフルート奏者のための音楽 (2008川島編 /初演)
ヴァイオリンとピアノのための音楽 II (1978) に基づく ヴァイオリンと4人のフルート奏者のための音楽 (2008川島編 /初演)

<出演> 
Nozzles
→サイト (木ノ脇道元 fl、斎藤和志 fl →ブログ、多久潤一朗 fl、古田土明歌 fl & vo →ブログ)
ROSCO (甲斐史子 vn、大須賀かおり pf)
→サイト、 神田佳子 perc →サイト、 川島素晴 cond




<experiment> 2008年9月20日(土)18:00開始〜20:30終了予定
STUDIO 1619 (グリーンSTUDIO)

¥500
(先着20名 予約優先入場制)

甲斐説宗の音楽  講師:川島素晴

一般にはなかなか音源を入手し難い甲斐説宗の諸作品を、
10年前の演奏会をはじめとした貴重な音源で聴きながらその音楽の軌跡を辿る。

なお、この日ご参加の皆様には、10年前に回顧展を開催した際に作成したパンフレットも無料配布致します。
甲斐の足跡を詳細にまとめ、各界からコメントが寄せられたもので、29日には300円で販売予定。

→10年前の個展詳細ページ



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ROSCO plays Kawashima & Yamane

<experiment> 2009年3月14日(土) STUDIO 1619
<live> 2009年3月19日(月)19:00 杉並公会堂・小ホール





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