ケージの 《Concert for Piano and Orchestra》 (1958) は、多様で難解な図形楽譜による、偶然性時代のケージの記念碑的作品である。
各パートは独奏でも演奏できるので、今回は、ピアノパートの完全演奏に加え、チューバの橋本氏をゲストに迎えての上演となる。
とりわけピアノパートは解読困難な図形楽譜を含む膨大な内容のため、ほとんどの場合は抜粋演奏となっている。
今回は、このパートの完全上演を試みる。
ジョン・ケージ 《Concerto for Tuba, Voice, and Piano》 =<下記の曲目の同時上演>
《Solo for Piano》(1957-8)
《Solo for Tuba》(1957-58)
《Solo for Voice 2》 (1960)
《Song Books》 より 《Solos for Voice 13, 45, 60》 (1970)
《Concert for Piano and Orchestra》(1958) は、図形楽譜による偶然性時代のケージの記念碑的作品である。
14パートからなる各楽譜はそれぞれ、独奏曲としても上演できる。しかも、それらをどのように組み合わせても良いという「不確定性の音楽」でもある。
今回はまず、ピアノパート(即ち《Solo for Piano》)の完全演奏に挑戦する試みに加え、チューバパート(即ち《Solo for Tuba》)を同時上演することとした。
また、この作品には、そのほかにも同時上演可能な別の作品が指示されており、その中には、偶然性で作曲された声のための幾つかの作品も含まれている。
今回は、その中から《Solo for Voice 2》と、《Solo for Voice》の続編として編まれた《Song Books》の中の《Solos for Voice 13, 45, 60》を上演する。
このように、演奏される編成は無数の可能性があり、それに応じて題名を変更して表記することになっていて、
今回の場合は、《Concert for Tuba, Voice, and Piano》という「曲名」になる。
これらの中でも、とりわけピアノパートである《Solo for Piano》は、84種類からなる図形楽譜による63ページの楽譜で構成され、
全種類の図形楽譜は異なる読み方が指示されている。そもそも部分上演が可能であること、そして84種類の中には解読困難なものも多数含まれること、
何より膨大な分量のせいもあって、この作品の上演というのは、ほとんどの場合は抜粋演奏となっている。
この曲のフル編成版《Concert for Piano and Orchestra》の初演者であり、世界でも最も《Solo for Piano》を上演してきたと思われる
デイヴィッド・チュードアの演奏として残されている録音を参照しても、全楽譜の1%程度しか使用していないのではないかと考えられる。
それでももちろん、《Solo for Piano》の演奏といえるし、今日ではむしろ、チュードアの演奏こそが、《Solo for Piano》の一般的なイメージとして定着しているであろう。
(例えば、ピアノ以外の物品を用いた発音行為が指示される個所で、彼は必ず、大きな金属コイルを増幅した音具を使用する。
それはたいそう印象に残るのだが、しかし楽譜に指示された音具ではない。)