◆12人のイカレたチェリスト(2004)
12 Broken Cellists
<編成>12 violoncelli
<演奏所要時間>12分
<委嘱>財団法人 三鷹市芸術文化振興財団
<初演>2004年9月25日(土)三鷹市芸術文化センター・風のホール スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウ
スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウ
I 丸山泰雄 II 渡邉辰紀 III 村井将 IV 菊地知也 V 山本裕康 VI 林裕
VII 三宅進 VIII 原田哲男 IX 水谷川優子 X 室野良史 XI 三森未来子 XII 山本祐ノ介
<再演記録>・2005年10月6日(木)紀尾井ホール
・2005年10月7日(金)仙台市青年文化センター 丸山泰雄プロデュース 音楽のエッセンス
スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウ
I 丸山泰雄 II 渡邉辰紀 III 石川祐支 IV 菊地知也 V 荒庸子(仙台公演:森谷佳奈) VI 林裕
VII 三宅進 VIII 松浦健太郎 IX 水谷川優子 X 室野良史 XI 三森未来子 XII 山本祐ノ介
<CD>「スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウ」 (RONDO-MUSIC RMN-103)
スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウ (2005年8月16日所沢市市民文化センター キューブホールにて録音)
I 丸山泰雄 II 渡邉辰紀 III 村井将 IV 菊地知也 V 山本裕康 VI 林裕
VII 三宅進 VIII 原田哲男 IX 荒庸子 X 室野良史 XI 三森未来子 XII 山本祐ノ介
*お求めはロンド・ミュージックへ
(このサイトではまだ新譜情報が更新されてませんが、購入可能なはずです。)
<放送>・2005年11月27日(日)18:00-18:50
NHK-FM「現代の音楽」〜日本の作曲家/川島素晴(2)<詳細情報+放送音源(モノ)> 上記CD音源
<CDに掲載した解説>
「紀尾井シンフォニエッタ」のライブラリーを担当した1997年からの6年間に丸山泰雄氏と出会い、以来、ソロから合奏まで多数の編曲を提供してきたが、当初からチェロ12台のオリジナル作品の委嘱を希望なさっていて、この作品はその結実である。12人の個性を究極にデフォルメした「イカレた」楽案を各人に配しているが、それは構想段階で、全員の個性を熟知・観察していた丸山氏との入念な協議を経た結果である。12の楽案はループしつつ他人を巻き込み、果ては全員が全ての性格を瞬時に交替させるユニゾンに至る。各人各様の名技性が引き出される一方で、各楽案は次第に浸透していき結果的に12人全員のオールマイティーな技量と合奏能力が必要となる、難曲である。
<各キャラクターについて>
12のキャラクターは、下記の表のように設定されている。
「登場順」は、曲の中で実際に登場する順で、ライヴでは、最初の1人がまず登場し、順次出番に従って登場する。その際、各設定キャラになりきって(デフォルメして)、演技もつけて登場する。2005年の再演では、それがかなりエスカレートして、出てくるだけで受けをとるまでに至っていた。
「中心音」とは、各セクションの音楽を支配している中心音のことで、断片によってはほとんど調性音楽のようになっているものから完全な無調性のものまで様々なので、「中心音」という表記にした。12の断片がループする間に、半音ずつ中心音が上昇していくことによって、常に聴覚上の高揚感を伴うような仕掛けになっている。
「配置」は、舞台下手(客席から向かって左側)が1番、上手(右側)が12番、という具合になっていて、扇型に1列に並んでいる。登場順と比して、ランダムになっているわけだが、最後の最後は、客席後方から1番(丸山氏)が登場し、全体を統率するような役割を担う。
「キャラクター・奏法」については、簡明に表記したが、ここに書かれている方向で、ちょっとおかしいんじゃないか、というところまでデフォルメしてもらっている。
「初演時想定者」は、これこそが丸山氏の性格分析の結果なのであり、その後の上演で「代奏」している人については、性格という面では該当しないかもしれない。しかし、あらゆるイディオムをこなすプロフェッショナルな人々なので、「他人の仮面」をかぶるのも全く支障なく実現して下さった。(いずれにせよ、曲の最後には、全員で全ての断片を演奏しなければならないわけだが。)
登場順 | 中心音 | 配置 | キャラクター・奏法 | 初演時想定者 | CD録音担当者 | 2005年再演メンバー |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | C | 7番 | 猛烈な重弦トレモロ | 三宅進 | 同 | 同 |
2 | C♯ | 10番 | 酩酊するアルペジォ | (服部誠)* | 室野良史 | 同 |
3 | D | 2番 | 躁的で急激な跳躍 | 渡邉辰紀 | 同 | 同 |
4 | D♯ | 5番 | 痙攣トレモロ(sul pont.) | 山本裕康 | 同 | 荒庸子(仙台:森谷佳奈) |
5 | E | 12番 | 過度なカンタービレ | 山本祐ノ介 | 同 | 同 |
6 | F | 8番 | 断固たる重弦連打 | 原田哲男 | 同 | 松浦健太郎 |
7 | F♯ | 3番 | 脆弱なハーモニクス | 村井将 | 同 | 石川祐支 |
8 | G | 6番 | 偏執狂的特殊奏法 | 林裕 | 同 | 同 |
9 | A♭ | 9番 | 陶酔的ピツィカート和弦 | 水谷川優子 | 荒庸子 | 水谷川優子 |
10 | A | 11番 | 分裂的トリル+ピツィカート | 三森未来子 | 同 | 同 |
11 | B♭ | 4番 | 生真面目な音階 | 菊地知也 | 同 | 同 |
12 | B | 1番 | 超然たる統率音型 | 丸山泰雄 | 同 | 同 |
*作曲段階では服部氏を想定していたが、初演は都合で参加できず、初演時から室野氏が代奏した。
キャラ的には、服部氏を強く想定している。
実は、2004年の初演時、ライヴの他に、きちんとレコーディングも実施していた。しかし、ハードディスクのトラブルにより、収録したものが全て(他の収録曲も)消滅してしまったのである。そこで、2005年8月15日と16日に、再度レコーディングを行うことになった(川島作品は16日)。CDについてはほぼ初演時メンバーで収録できたのだが、怪我の功名というべきか、2度目ということもあって、大変にこなれた状態で録音に臨むことができたのではないかと思う。
ただ、その後、10月のライヴにはこのCDを発売できるように間に合わせる必要があり、編集作業はかなり切羽詰ったものになった。(9月上旬には個展ライヴの直後にガウデアムスに飛ぶ、というハードスケジュールだったので、かなり大変だった。)
「なりきり演技付き」という意味では、視覚的要素が大きい作品ではあるが、音の表現みでも、充分それが伝わるような内容になっているので、是非、CDを聴いてみて下さい。
(2005年11月27日記)